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Kuniko Mukoda + Milli Vernon

ミリー・ヴァーノンと向田邦子

最近、女性のことに触れた文章を書いたことがないのに、気付いた。もうずいぶん前のことだが、夜中にTVのスウィッチを入れると、NHKで向田邦子の"父の詫び状"の再放送が流れていた。この物語りは以前にも何度も観ていたので、ソファーに寝転がりながらそれとなく画面に目をやり向田邦子のことを考えていた。ひとには言ったことがないが、ボクは若い頃からずっと理想の女性が彼女だった。 "父の詫び状"には、彼女が常に家庭の中で怒鳴り散らすことで
しか父親の威厳を保つしか無い男の存在の危うさを見抜いていたし、彼女の実生活での愛する既婚者のカメラマンに献身的に尽し、その果てにある、首つり自殺するほど悩んでいた男になにひとつ救いの手を差し伸べることのできない、男と女にある深い溝、女としての不甲斐なさを感じていただろうこと、などなどに思いを馳せていた。若い頃の向田邦子の切れ長の目と、だんご鼻、この顔もボクが彼女が好きな要因のひとつだが、なによりも、“女はうまれたときから死ぬまで女”という彼女の、絶対に自分の弱さをひとにさとらせない、凛とした心の襞の細やかさに理想の女性像をみていた。
先日レコード整理をしていると、向田邦子の好きだったジャズ・ヴォーカリスト、ミリー・ヴァーノンの埃を被った"Introducing"が出て来た。久しぶりに聴いてみると、余りにもノスタルジックでいまではピンとこないが、聴いているうちに人との関わりのなかで、心の襞にある情念をほとんど人に見せないで、クールに振る舞ってきている自分にふと気付かされた。 "智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。"とは夏目漱石の草枕のなかの一節だが、彼女がこうしたノスタルジックで情念的な音楽を裏で聴いていたのも、向田邦子の世界がそうした情念や涙で成立している人の世の裏返しにある乾いた視線で人間模様を眺め描いていたからだろう。だからこそ"父の詫び状"などをみていると、心の中の痛みが呼び戻され泣いてしまうのだ。ロックミュージックに関わってからというものは情に棹させば流され生きるひとびとを極端に嫌悪し、情緒的なものに左右されない、"泣き"を突き破った人間関係を確立させることも可能なのではないかと思い続けてきた。言葉や態度で言い訳しなくとも、心の襞の細やかさを持つ人間ならば、分かり合えるだろうと・・。だけど、ボクのそうしたクールな振る舞い、人の体温が重なることを拒否し続けてきた態度、そうしたものがボクの人生をより豊かに楽しいものとさせたかどうか、いまは分からない。でも、乾いてしまったボクのなかの涙をいつか取り戻さなければならないことも、分かっている。ひとのこころの深みをみつめる向田邦子のあの視線がたまらなく愛おしい。

Milli Vernon / Introducing (STORYVILLE STLP 910)
1.Weep For The Boy 2. Moments Like This 3. Spring Is Here 4. St. James Infirmary 5. My Ship 6. This Year's Kisses 7. Moon Ray 8. Everything But You 9. Blue Rain 11. I Don't Know What Kind Of Blues I've Got 11. I Don7t Know What Kind Of Blues I've Got 12. I Guess I'll Have To Hang My Tears Out To Dry
Milli Vernon (vocal)
Ruby Braff (trumpet)
Jimmy Raney (guitar)
Dave Reuther (bass)
Jo Jones (drums)
recorded at NYC - 2/1956

The Song Is You / Millie Vernon
http://www.youtube.com/watch?v=ThF-M_8eJKs

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2008年11月27日 21:42に投稿されたエントリーのページです。

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